事業主は、次のことを理由に従業員に対し解雇その他不利益な取扱いをしてはいけません。
・育児休業、産後パパ育休、介護休業、子の看護等休暇、介護休暇、所定外労働の制限、所定労働時間の短縮措置、時間外労働の制限、深夜業の制限について、その申出をしたこと又は取得をしたこと等
・本人又は配偶者が妊娠・出産等をした旨の申し出をしたこと
・産後パパ育休期間中の就業可能日の申出・同意しなかったこと
・対象家族の介護に直面した旨を申し出たこと(※1)
・柔軟な働き方を実現するための措置の申出若しくは措置の利用を申し出たこと(※2)
・本人又は配偶者が妊娠・出産等をした旨の申出時や子が3歳になる前の時期に聴取した従業員の仕事と育児の両立に関する意向の内容(※2)
※1:令和7年4月1日施行
※2:令和7年10月1日施行

従業員が育児・介護休業等の申出をしたこと及び取得したこと等との間に因果関係がある行為で、例えば次に掲げるものが該当します。
- ①解雇すること。
- ②期間を定めて雇用される従業員について、契約の更新をしないこと。
- ③あらかじめ契約の更新回数の上限が明示されている場合に、当該回数を引き下げること。
- ④退職又は正社員をパートタイム労働者等の非正規社員とするような労働契約内容の変更の強要を行うこと。
- ※勧奨退職や正社員をパートタイム労働者等の非正規社員とするような労働契約内容の変更は、従業員の表面上の同意を得ていたとしても、これが従業員の真意に基づくものではないと認められる場合には、これに該当します。
- ⑤自宅待機を命ずること
- ※事業主が、育児休業や介護休業の終了予定日を超えて休業することや、子の看護等休暇や介護休暇の取得の申出に係る日以外の日に休業することを従業員に強要することは、これに含まれます。
- ⑥従業員が希望する期間を超えて、その意に反して所定外労働の制限、時間外労働の制限、深夜業の制限、所定労働時間の短縮措置等又は柔軟な働き方を実現するための措置を適用すること。
- ⑦降格させること。
- ⑧減給をし、又は賞与等において不利益な算定を行うこと。
<不利益な算定に該当しない例>
- ○育児休業、介護休業期間中において、現に働かなかった時間について、賃金を支払わないこと
- ○子の看護等休暇、介護休暇、養育両立支援休暇を取得した場合や所定労働時間の短縮措置等を利用した場合において、現に働かなかった時間について、賃金を支払わないこと
- ○退職金や賞与の算定に当たり、現に勤務した日数を考慮している場合、育児休業等により労務を提供しなかった期間を算定対象期間から控除すること
<不利益な算定に該当する例>
- ○育児休業、介護休業期間等、現に働かなかった期間を超えて、賃金を支払わないこと
- ○子の看護等休暇、介護休暇、養育両立支援休暇を取得した場合や所定労働時間の短縮措置等を利用した場合において、現に働かなかった日・時間を超えて働かなかったものとして取扱い、賃金を支払わないこと
- ○退職金や賞与の算定に当たり、現に勤務した日数を考慮している場合、育児休業等により労務を提供しなかった期間を超えて、算定対象期間から控除すること
- ○休業を申し出たがまだ休業期間に入っていない場合など、労務の不提供が生じていないにもかかわらず、育児休業等の申出等をしたことのみをもって、賃金又は賞与若しくは退職金を減額すること
- ⑨昇進・昇格の人事考課において不利益な評価を行うこと
<不利益な評価に該当する例>
- ○育児休業又は介護休業を取得した従業員について、休業期間を超える一定期間、昇進・昇格の選考対象としない人事評価制度とすること
- ○実際には労務の不提供が生じていないにもかかわらず、育児休業等の申出等をしたことのみをもって、当該育児休業等の申出等をしていない者よりも不利な評価を行うこと
- ⑩不利益な配置の変更を行うこと
<不利益な配置の変更に該当する例>
- ○通常の人事異動のルールからは十分に説明できない職務又は就業場所の変更を行うことにより、その従業員に相当程度経済的又は精神的な不利益を生じさせること
- ⑪就業環境を害すること
<就業環境を害することに該当する例>
以上は、あくまでも「解雇その他不利益な取扱い」の例示であり、ここに掲げていない行為についても個別具体的な事情を勘案すれば、不利益取扱いに該当するケースもあり得ます。
★上の場合の解雇その他不利益な取扱いの意思表示は無効になります。最初からなかったものとなるということです。